例年見学している展示会・コンテンツ東京に、今年もまた。
もともとは、書籍制作に関わるものとして、
東京国際ブックフェアに毎回のように通っていました。
ですがこちらは2016年で開催終了。
以来、当時同時開催だったコンテンツ東京を
覗いてみるようになっています。
今回は展示見学のほかに、2つのトークセッションを
拝聴してきました。
参加した2つのトークセッション
Web3に基づく新しいエンタメ制作の形
ひとつは、「クリエイターエコノミー×DAO」と銘打ったセッション。
日本初のエンタメDAO「SUPER SAPIENSS」を展開する、
堤幸彦監督、本広克行監督、佐藤祐市監督、
森谷雄プロデューサーと、SUPER SAPIENSSの使用する
プラットフォーム・FiNANCiEの國光宏尚CEOが登壇しました。
ちなみにDAOとは、
分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)
のことで、特定の所有者や管理者が存在しなくても
事業やプロジェクトを推進できる組織、
とのこと。
ビットコインもDAOの一つです。
(DAOについて詳しく知りたい方は、
こちらの記事を参照してください)
また、映像のみならずWebtoonの準備も進行中で、
その編集を担当する佐渡島庸平氏がビデオメッセージで、
作画を担当するちょびさんがzoomで参加されました。
エンタメDAOのメリット
エンタメDAOの大きな特徴については
次のような点が挙げられます。
「製作委員会」に振り回されず、
作り手が本当に作りたいものを
作ることができる仕組みであること。
作る側と見る側が明確に分かれていた
従来の作品とは異なり、
見る側が積極的に作ることに関われる、
あるいは作られていく過程を見ることができる、
ということ。
今回の話で一番印象的だったこと
今回一番印象的だった話。それは、
エンタメでもっとも面白いのは、
たとえ一瞬しか映っていないエキストラ出演でも、
自分、あるいは友人が関わっていると、
途端にその作品に対する親近感、愛着が湧く、
ということでした。
ましてや、もっと多様な関わり方ができる
SUPER SAPIENSSでは、
より多くの人が、より深く
作品につながることができます。
それだけ、多くの人が情熱を持って
作品に関わることができるということです。
そんなSUPER SAPIENSS、
昨年、コンテンツ東京2022のトークセッションで知り、
トークンを購入していたのに、
最初の短編作品の披露上映を観て以来、
ほとんど関わっていませんでした。
今回あらためて、もっと情報を追っていかないと
もったいないなあ、と。
引き続き、この企画に関わるサポーター、
通称「共犯者」を募集しているとのこと。
公式サイトはこちら。
下記画像のURLでFiNANCiEをダウンロードして
参加することもできます。
堤監督から、将来は三監督を代々襲名していく?
なんて話も飛び出し、
クリエイティブに関わるものとして、
非常に刺激的なセッションでした。
AIの進化によるコンテンツ制作の変化
2つめのセッションは、
「生成AIでコンテンツ・クリエイティブが進化する」
と題して、生成AI(ジェネレーティブAI)の現状と、
今後のコンテンツ制作がどのように変わっていくか、
という話。
noteプロデューサーの徳力基彦さんの進行で、
同じくnoteのCXOである深津貴之さんと、
Stability AI Japan代表のJerry Chiさんが登壇しました。
急速に進化する生成AI
深津さんが主にAIによる文章生成について、
Jerryさんが画像生成について語りました。
進歩のスピードは格段に早くて、
1年ほど前に生成AIに注目して
いろいろ試し始めたという深津さんも、
予想を超える進歩にびっくりしているとか。
深津さんはnote公式YouTubeで
Chat GPTに関する動画を挙げていますが、
チャンネルの中でダントツの閲覧数だそうです。
そのChat GPTの影響で、
一般の人にもその著しい進歩が知れ渡った生成AI。
ただ、「チャット」とついているからといって
チャット、つまりコンピュータとおしゃべりするものなのだ、
と思ってしまうのは大きな勘違いだ、とのこと。
AI進化の真のメリット
そもそも、言語解釈のAIでは
実際にはおしゃべりができているわけではなく、
入力した文言に対して、
もっとも確率的に高い内容、
つまり「それらしい」文章を返す、
というのがベースにあるとか。
たとえば、
「むかしむかし、」
と入力すると、
「あるところに、おじいさんとおばあさんが……」
と続くようなことです。
それを、膨大なデータを学ばせたところ、
結果として現在のようなチャット型の
AIに進化したとのこと。
Chat GPTのみならず、
最近の生成AIの進歩は自然言語、
つまり人間が普通に使っている言語で
コンピュータに対して指示が出せるように
なったことが、最大のポイント。
これまでは、プログラミング言語、
つまりコードを書かなければならなかった。
しかもそれは、用途に応じたプログラムや
アプリケーションを必要とした。
あるいはコードが用意されていても、
ボタンを押すなど、特定のアクションを必要としていた。
それが今後は、普段使っている言葉で伝えるだけで、
それを解釈するアプリを介して
監視カメラだろうとロボットだろうと、
あらゆるコンピュータを操作することが可能になる。
これは産業革命で蒸気機関が発明されたとき以上の、
大きな変化をもたらすだろう。
そんなお話でした。
コンテンツ制作に与える影響
クリエイティブの面で言えば、
これまでは特定のものすごい才能を持つ人が、
それを具現化する多くの人たちの助けを借りることで
発信できていたコンテンツも、
ある程度のレベルの人が、
その人とAIの力だけで
それなりのものを出すことができるようになる。
これはコンテンツの土台部分がものすごく広く、
大きくなることを意味していて、
その分、上位のクオリティは
ものすごく上がっていくのではないか。
とすれば、そこそこのクオリティのものは
情報の網に全くかかることがなくなるので、
クリエイティビティを発揮する人は
より一層高いレベルへと磨き上げていく
必要があるだろう、ということでした。
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エンタメDAOにしても、
ジェネレーティブAI(生成AI)にしても、
その技術の進歩ももちろんですが、
もっとも大きいのは仕組みをガラッと
変えてしまうことなのかな、と感じました。
展示を観るには時間が足りず
さて、コンテンツ東京の展示の方ですが、
2つもセッションを聴いてしまうと、
その規模に対して見学時間が全く足りませんでした。
多くの出展者が並ぶクリエイターEXPO
いつもはじっくり回るクリエイターEXPOも、
さらりと回るにとどまりました。
(……とはいえ毎年、自分からお仕事を
提供できるわけでもないのに
たくさんのパンフレットをいただいて
しまうことに心苦しさも抱えてはいたのですが)
それでも、気になるクリエイターさんの
パンフレットをいくつか、いただくことができました。
トークセッションで聴いたAIの進歩・進化による、
こうした方々への影響も大いに気になりました。
大手フォントベンダーの1つ・フォントワークス
筑紫明朝などの筑紫書体シリーズで有名な
フォントベンダー(書体提供者)のフォントワークス。
エヴァンゲリオンシリーズで使われている明朝体が、
この会社が提供する「マティス」というフォントであることは、
知る人ぞ知る話かもしれません。
こちらのブースでは、
普段もっぱらM社の書体ばかり使っているので
心苦しくもありながら、いろいろお話をさせていただきました。
その中で思いがけず面白いアイディアもいただいたので、
今後、なにか新しいことができるかも?
インキの大手メーカーがライセンシングにも関わる
ライセンシングジャパンのエリアに出展していた、
印刷用インキメーカーとして有名な
DIC(かつての大日本インキ)では、
なぜここに出しているのか、
ということについて言い訳(?)を聞かされることに(笑)
DICは、印刷の際に指定の色を正しく伝えるため
「カラーチップ」というものを用意しています。
そのなかに、「日本の伝統色」という
カラーチップのセットがあります。
それは、単に日本らしい色を集めた
というだけではなく、
それぞれの色に対する解説も掲載。
その解説文には、
DICとしての著作権があるのですが、
勝手に使われてしまうことがしばしば。
1つや2つならともかく、
ときには大量に転用されてしまうことも。
そこで、色の解説文はDICの著作物であること、
活用したい場合は権利関係を明確にして
使ってくださいね、ということを伝えるために、
今回このエリアに出展している、とのことでした。
話はさらに、DICが展開している
色についてのコンサルティングへと展開。
色に関する多くの知見を生かして、
ある地域の特徴や特産を色を起点にして紹介したり、
ある施設の設備について配色プランを提案したり、
といった事業も行なっているそうです。
制作物のブラッシュアップのために
終了時間は過ぎていたのですが、
出口へと向かう途中、
気になるブースが目に留まりました。
それは、株式会社Brushupという会社のサービス。
印刷物や動画など、制作物に対して
修正を依頼したり受けたりする際に、
その情報の入り方がまちまちで、
最終的な指示がわかりにくかったり、
データの閲覧に不具合があったり
というトラブルはよくあるもの。
それを、特別な環境やアプリケーションがなくても
パソコンのブラウザがあれば閲覧でき、
修正履歴も一元的に管理できるサービスを
展開している、とのこと。
説明を聞き、ぜひ一度試してみたいと思いました。
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そんなわけで、時間は足りなかったのですが
多くのことを得られた1日となりました。