私は、DTPをメインの生業としているのですが、
そもそもDTPって何?
と思う人が多いのが現実だったりします。
みなさんに説明するときは、
「パソコンで印刷物、出版物のデータを
作成するのがDTPで、
これはデスクトップ・パブリッシング
(Desk Top Publishing)の略です」
と言っています。
なぜ「DTP」というかと言えば、
机の上に乗るという“画期的な小ささ”を誇る、
マッキントッシュⅡ
というコンピュータが登場したことにより、
可能となった仕事だからです。
それまでは、
大きな棚に並んだ
1文字1文字が彫られた活字を
拾い出して並べる活版
文字の一覧の型に光を当てて
印画紙に焼き付ける写真植字(写植)
写植をコンピュータ内
(もちろん、机の上に乗るようなサイズではない)
で処理できるようになった電算写植
というように、印刷のための技術は
進歩してきました。
しかしいずれも、大きなスペースや
機械を必要とするもので、
個人で取り扱えるものではなかったのです。
それが、DTPの登場によって
劇的に変わりました。
なにより、それを生業、
あるいは仕事とできる人が
広がったことが大きいと言えます。
あるいは仕事とできる人が
広がったことが大きいと言えます。
DTPはデザインと混同されることが多いですが、
厳密にいえば別物です。
料理でいえば、
レシピを考えることがデザインで、
DTPは、実際に調理をすることです。
建築でいえば、
どのような建物にするかを
考えるのがデザインで、
実際に建てるのがDTPに当たります。
だから、デザイナーは料理研究家や設計士で、
DTPは調理師や大工さんに当たります。
ややこしいことに、
DTPを仕事とする人は主に2種類あり、
「DTPデザイナー」と「DTPオペレーター」
とがあります。
DTPデザイナーは、料理でいえば
新しい料理を考案して、
自分で調理をしてお客様に出すところまで
やってしまうような人たちです。
対してDTPオペレーターは、
レシピに合わせて料理を作っていく人。
そのため、往々にして
DTPデザイナーより下に見られがち。
自分の場合はデザインよりも
オペレーションなので、
DTPオペレーターとなるわけです。
ところが、このDTP自体も奥が深い。
料理でいえば、食材をどのように
カットしたらバランスよく火が通るのか、
どのタイミングで火加減を変えるのか、
調味料をどう加えていくか、
といった、特有のコツがあるものですが、
DTPにもそれはいえます。
調理器具であるパソコンや専用ソフトを
どのように活用するのか、
食材である文章や写真などを
どのように下ごしらえするのか。
読みにくくないように文字の種類を
統一したり、誤字や脱字が無いように
仕上げていくのは、
料理を口に入れたときに
一部だけ硬いところがあったり、
入ってはいけない異物が入らないように
心がけたりするのと同じです。
外から見たらきれいに仕上がった家でも、
土台にズレがあったり、
必要な釘を打ち損ねたりしていたら、
徐々に傾いたり、
大きな地震に耐えられない可能性も。
印刷出版物でも、それは同じことなのです。
最近は、個人でデザインをできる環境が整い、
いわゆる「素人」でも、
自分でチラシを作ったり、
情報発信用の画像を作ったりということが、
気軽に、簡単にできるようになってきました。
ところが、家で自分や家族が食べる料理なら
いいけれど、お客さんを招いて振る舞うには
ちょっと……というものがあるように、
そういうレベルの印刷物や、
さらには電子書籍などの出版物も
多数目にするようになってきました。
レシピは悪くないけれど、
包丁さばきがうまくないだけ、
という場合もあれば、
そもそもなんでこの食材や調味料を
使ったの?というもの、
果てはこれを人に食わせようとは
なかなかのツワモノだなあ、
と、料理なら誰でも思うようなものが、
印刷物、出版物では平気で
出回っていたりします。
そういう状況を見るにつけ、
やっぱりモヤモヤするものを感じます。
しかし自分はデザイナーというより
DTPオペレーターなので、
どうも自信を持ってそういう状況に
物申せないでいました。
そもそもオペレーターとして
活動している人の中にも、
火加減のコツを知らなかったり
食材の見極め方を知らなかったり
するような人がいる。
ひどい時には、
フライパンの振り方もわからない、
そんなレベルの人まで。
そういうくくりに自分を入れていると、
やっぱりなかなか前には出にくい。
そんなわけで自分は、
「DTPマイスター」
を名乗ることにしました。
気がつけばDTPをするようになって
今年で20年。
デザイナーやクリエイターを名乗る人のように、
0→1をやるのは得意ではないし、
そんなに好きでもない。
でもそこに1があるなら、
それを2にも、5にも、10にもできる。
そう言える程度には、
経験もスキルも積んできました。
デジタルで済ませるにしても、
実際に手にするものにしても、
出版物、印刷物を作りたいと思っている人の
お手伝いができるように、
これからもさらに精進していこう
と思っているこの頃です。