ダメ絶対!段落中の改行──本の原稿ならこれを守って

言葉

Kindleの登場により、誰でも本を出せる時代になっています。

だからか、本の紙面・文面をどう作るかがすっかりいい加減になっている本が、ずいぶん増えてしまいました。

私は市販の書籍制作に携わって21年になるので、こういうのはついつい気になってしまいます。

なかでも、これだけはできるだけ早く、声を大にして伝えておかなきゃ、ということがあるので、急いで書きました。

本を出そうとしている人に、ぜひとも伝えておきたいこと。

それは、

段落の途中で絶対改行しないこと

これに尽きます。

「え? なんで?」

と思った方は、ぜひこの後も読んでください。

「いや、ここでアンタもやってるじゃん!」

と思った方、なかなか鋭い。
こういう方も、ぜひ知っておいてほしいことです。

本の文章はぶつ切り不要

メールやブログで、文章を短く切る人がどんどん増えてきました。

それは、スマホの小さな画面で、文章をスクロールしながら見る人が増えたから。

こういう人が増え始めたころは、


メールやブログで、文
章を短く切る人がどん
どん増えてきました。


というふうに、決まった文字数で機械的に切る人が多かったです。

でも最近は、


メールやブログで、
文章を短く切る人が
どんどん増えてきました。


こんなふうに、意味の切れ目(=文節)で切る人が増えています。

こうやって区切るのは、たしかに、画面をスクロールしながら読む人にとっては読みやすいかもしれません。

画面全体が文字で埋まることを避けられる
ひと目でパッと文章が目に入る

などのメリットがあるからです。

ただこれは、相手が読む環境にはさまざまな違いがある、という点を考慮していない書き方です。

読む人が、自分の環境には合ってないなあと思いつつも、それでも、それほど長い文章でないならなんとか読んでもらえるかもしれません。

でもKindleなど、「本」として出すときには、ある程度の文章量になるはずです。

そのとき、こんな状態が続いたら、読み続ける気になるでしょうか。

 


そんな話を、どこかで聞いたことは
あった気が
するけど、なんとなく、他人事の
ように思って
いました。でもそれが、自分の身にも
当たり前の
ように降りかかってしまいました。

(旅野あしのすけ『ぼくの脳梗塞日記(1)』より)


例をお見せするために、自分の本を使ってみましたが、それはさておき。

こんなふうに書いてあったら、読みにくくないですか?

これは、書いた人が想定した1行あたりの長さと、読む人の環境の1行あたりの長さが違うために、起こってしまうことです。

こういうことを避けるためにも、本を書くときには、むやみに段落の途中で改行を入れることはやめるべきなのです。

それを防ぐために、極端に短く切る人もいます。


そんな話を、どこかで
聞いたことはあった気が
するけど、なんとなく、
他人事のように思って
いました。でもそれが、
自分の身にも当たり前の
ように降りかかって
しまいました。


たしかにこうすれば、変なところでガタガタと、文が途切れることはないかもしれません。

でもこれでは完全に、スマホ向けのコンテンツを読んでいる、という感じで、本を読んでいる、という感じにはなりません。

あくまで、本にこだわるなら、ということではありますが。

ちなみに、ひどい人になるとこの細切れ状態のまま、紙書籍にする人がいます。

そんな本は、余白だらけで、かなり内容が薄く見られてしまう、という欠点が。

私自身は、まるで詩集のようだ、と思いました。

もちろん、詩のような深さを含んだ文ではないので、単なるページ稼ぎみたいに軽薄に見えてしまいました。

文章の書き方は、時代につれ変わるものではあるけれど

こういうのは、単に長く本づくりに携わってきた者の、愚痴の部類とも言えるかもしれません。

大河ドラマ『べらぼう』をご覧になっている方はおわかりかと思いますが、江戸時代の文章はそんなことにごだわって書かれてはいませんでした。

細かいことはややこしくなるので、また改めて書きますが、あくまで今、本を書くなら、まだまだぶつ切りはやめた方がいい。

そう思う次第です。

一文一文を短くする
段落の間はあける

ということは有効ですが、ひと繋がりの段落なら、無闇に改行しないことを強くお勧めします。

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